公開日:2004年5月28日
最終更新日:2017年11月19日

ユーザー要望対応機能もあります

エアコンの自己診断機能

Self-diagnosis function of the A/C

カテゴリー : 基本資料

Y31シーマ全車およびY31セドリック・グロリアのフルオートエアコン、ITエアコン搭載車に適用
(Y31セドリック・グロリアの資料から引用しました)

ITエアコンとは、後席温度調節機能をフルオートエアコンに付加したもので、ITはIndependent Temperature controlの頭文字です。

エアコンには、故障箇所を簡単に発見するための自己診断機能が備わっています。5つの自己診断ステップと、さらに、ユーザーの要望に対応するステップの計6ステップで構成されています。

操作要領

ノーマルモードから自己診断モードに切り換えるには、エンジンをかけてから10秒以内にエアコンの「OFF」スイッチを5秒以上押します。なお、エンジンをかけなくてもキースイッチを「ON」にしてこの操作をすれば自己診断モードになりますが、診断中はエアコンが作動するので、バッテリー上がりを防ぐためにもエンジンをかけることをおすすめします。

自己診断モードからノーマルモードに戻すには、キースイッチを「OFF」にするか、「エアコン」スイッチを押します。この操作をすればいつでも復帰できます。

下記ステップ1~5の切り換えは、HOTスイッチ(△)、COLDスイッチ(▽)を使い、ステップ5~6の切り換えは、ファンスイッチを使います(故障診断時はステップ6は使いません)。

この操作はY31型以降の年式の車種でオートエアコン、ITエアコン搭載車なら共通だと思いますが、一部の項目が異なるようです。

各ステップの機能

ステップ1 LEDおよび表示部のセグメントチェック
ステップ2 各センサーのチェック
ステップ3 モードドア位置のチェック
ステップ4 各アクチュエーターの作動チェック
ステップ5 各センサーの認識温度表示
ステップ6 ユーザー要望対応機能

ステップ1 - LEDおよび表示部のセグメントチェック

ステップ1では操作ボタンのLEDと蛍光表示管の表示部をチェックします。

正常時 LEDおよび表示部がすべて点灯する。(※)
異常時 異常箇所が点灯しない。

※Y31セドリック・グロリアのエコノミーモード2がないエアコンでは、”ECON”は点灯しません(後期型から存在しているようです)。エコノミーモード2とは、季節や状況に応じてコンプレッサーをON/OFF制御をするモードです。

HOTスイッチ(△)を押すとステップ2に進みます。

ステップ2 - 各センサーのチェック

各センサーからの入力信号が基準値を満たしているか検出し、結果を表示します。

ステップ2になると、自動でエアミックスドアアクチュエーターを作動させ、位置検出スイッチからの入力信号が正常かどうかを検出し、その結果を表示します。

正常時 ”20”が表示される。
異常時 異常のあるセンサーNo.が表示される。
この表示は日射センサーの異常を表しているが、日差しが強いときにもこの表示が出る場合がある
この時、センサーが短絡(ショート)していると判定された場合は、マイナス(-)も表示される。
また、複数のセンサーに異常がある場合は、それぞれの番号が2回ずつ順に点滅表示される。
表示センサーNo.対センサーと、判定基準
表示センサー
No.
対応するセンサー 断線とみなす基準 短絡とみなす基準
20 (正常) - -
21 外気センサー -40℃以下 100℃以上
22 内気センサー -40℃以下 100℃以上
23 水温センサー(エアコン用) -20℃以下 150℃以上
24 吸込温度センサー -40℃以下 100℃以上
25 日射センサー 0.007mA以下 0.248mA以上
26 PBR(※) 50%以上 30%以下

断線や短絡をしていなくても、判定基準に達していれば、そのようにみなします。

診断結果が"25"の場合は日射センサーですが、センサーが正常でも周囲が暗すぎたり、陽射しが強くて明るすぎると異常だと判定されることがあります。日射センサーに当たる光の量を変えてからもう一度診断してみて下さい。

診断結果が"26"、"-26"の場合は、アクチュエーターの不良などでドアの動きが悪いか、またはPBR(センサー)の異常が考えられます。ドアが正常に作動していないと、設定温度よりもかけ離れた温度の空気が排出されます。
エアコンの吹出風温度がおかしいときはこちら

※PBRとは、エアミックスドアアクチュエーターに内蔵されているドア開度検出用のセンサーのことで、Potentio Balance Resistorの頭文字。ドア開度を抵抗値に変換して検出しています。
ステップ2では、エアミックスドア開度40%を基準値として判定します(フルコールド0%、フルホット100%)。動きが悪いなどして開度40%にならないときは、判定基準によって"26"(断線)や"-26"(短絡)の表示が出ます。

エアミックスドアとは・・・
エアコンは暖かい空気と冷たい空気を混ぜて最適な温度にしています。その空気を混ぜる扉のことをエアミックスドアといいます。そしてそのドアを開閉する部品がエアミックスドアアクチュエーター。そしてそのドアがどのくらい開いているか調べるセンサーがPBRです。エアミックスドアアクチュエーターとPBRは一体になっています。またヒーターコックとも機械的につながっていて、冷却水の流量も制御しています。

COLDスイッチ(▽)を押すとステップ1に戻ります。
HOTスイッチ(△)を押すとステップ3に進みます。

ステップ3 - モードドア位置のチェック

モードドアとは、風向切り換え用の開閉弁のこと。モードドア位置の制御は、フロントモードドアアクチュエーターによって行われます。

ステップ3になると、フロントモードドアアクチュエーターが作動し、位置検出スイッチからの入力信号をチェックしてから結果が表示されます。全モードのチェックが終わるまでに約16秒かかります。

正常時 ”30”が表示される。
異常時 異常のあるモードNo.が表示される。

複数のモードに異常がある場合は、それぞれの番号が2回ずつ順に点滅表示される。
表示モードNo.対モードと、説明
表示モードNo. 対応するモード モードの説明(フルオートエアコンでの配風比率)
30 (正常) -
31 VENT 上吹き出し(約100%)とシャッター付きロアベント(数%)のモード。
32 B/L1 上吹き出し(50%)と下吹き出し(50%)のモード。
バイレベルモードという。
33 B/L2 上吹き出し(45%)と下吹き出し(45%)とデフロスター(10%)のモード。
B/L1モードにデフロスターを付加したモードで、低外気温時の窓ガラスの曇りを防止する。
34 D/F1 下吹き出し(83%)とデフロスター(17%)のモード。
35 D/F2 下吹き出し(68%)とデフロスター(32%)のモード。
D/F1モードよりデフロスターの吹き出しを割り増ししたモードで、寒冷時に限り、窓ガラスの曇り防止を促進させるために選ばれる(手動選択時はD/F1モードとなる)。
36 DEF デフロスター(100%)の吹き出しモード。
モード モードの説明(ITエアコンでの配風比率)
リアベントスイッチOFF、後席優先暖房スイッチOFF時 リアベントスイッチON時 後席優先暖房スイッチON時
VENT 上吹き出し(約100%)とシャッター付きロアベント(数%) 上吹き出し(約78%)とシャッター付きロアベント(数%) 、リア(22%) 上吹き出し(約100%)とシャッター付きロアベント(数%)
B/L1 上吹き出し(50%)と下吹き出し(30%) 、リア(20%)
B/L2 上吹き出し(40%)と下吹き出し(27%)とデフロスター(13%)、リア(20%)
D/F1 下吹き出し(54%)とデフロスター(18%) 、リア(28%) 下吹き出し(46%)とデフロスター(15%) 、リア(39%)
D/F2 下吹き出し(44%)とデフロスター(30%)、リア(26%) 下吹き出し(38%)とデフロスター(25%) 、リア(37%)
DEF デフロスター(100%)

COLDスイッチ(▽)を押すとステップ2に戻ります。
HOTスイッチ(△)を押すとステップ4に進みます。

ステップ4 - 各アクチュエーターの作動チェック

ステップ4になると、”41”が表示されます。
さらに、この状態でデフロスタースイッチを押すと、スイッチを押すごとに表示No.が”42”、”43”、・・・と切り換わり、”46”の次は”41”に戻ります。

ステップ4では、この表示No.に対応して、各アクチュエーター、ブロアモーター、コンプレッサーに特定の作動を行い、この作動状態をユーザーが目視、音、体感などでチェックします。

表示No.対作動状態
表示No. モードドア インテークドア エアミックスドア ブロアモーター コンプレッサー
41 VENT 内気 フルコールド 5V ON
42 B/L1 内気 フルコールド 10.5V ON
43 B/L2 20%外気 フルホット 8.5V ON
44 D/F1 外気 フルホット 8.5V OFF
45 D/F2 外気 フルホット 8.5V OFF
46 DEF 外気 フルホット 12V ON

COLDスイッチ(▽)を押すとステップ3に戻ります。
HOTスイッチ(△)を押すとステップ5に進みます。

ステップ5 - 各センサーの認識温度表示

ステップ5になると、”5”が表示されます。

さらに、この状態でデフロスタースイッチを押すと、スイッチを押すごとに外気センサー、内気センサー、吸込温度センサーの認識温度が表示されます。
氷点下のときはマイナス(-)が表示されます。

COLDスイッチ(▽)を押すとステップ4に戻ります。
ファンスイッチを押すとステップ6に進みます。

ステップ6 - ユーザー要望対応機能

ステップ6では、設定温度と制御温度をずらす機能と、キー「OFF」時のインテークドア位置を記憶して再始動時に固定させる機能があります。
ただし、この機能は、バッテリーを外すと初期状態に戻ります。ユーザーの要望でステップ6をセットした場合には、バッテリーを外した時の変化についてもユーザーに説明してください。

ステップ6になると、通常(初期状態)は”AUTO”、”0.0℃”が表示されます。

a.設定温度と制御温度の誤差補正

ステップ6の状態でHOTスイッチ(△)、またはCOLDスイッチ(▽)を押すごとに、0.5℃ずつ制御温度が変化します。+3.0℃~-3.0℃の範囲で補正できます。初期状態は0.0℃です。

(使用例)設定温度を25℃にしているのに25℃よりも高く感じる場合は、補正値を-3.0℃にすると制御温度は22℃となり、設定温度より3.0℃低い温度で制御されます。

b.キー「OFF」時の吸入口の記憶

これは、キースイッチを「OFF」にしたときのインテークドア位置(外気導入か内気循環か)を記憶させる機能です。キースイッチを再度「ON」にしたときに、前回キー「OFF」にした時点のインテークドア位置からスタートできます。

ステップ6の状態で外気導入スイッチを押すと”AUTO”が消え、記憶機能が有効になります。また、再度外気導入スイッチを押すと”AUTO”が点灯して、記憶機能は無効(初期状態)になります。

記憶機能は無効(初期状態)
記憶機能は有効

(使用例)常に内気循環にしておきたい場合、この記憶機能を有効にしておくと、エンジンをかけなおしても内気循環のままにできます。

ファンスイッチを押すとステップ5に戻ります。
「エアコン」スイッチを押すといつでも診断モードを終了できます。