公開日:2004年8月12日
最終更新日:2017年11月13日

”ANTI-LOCK”が点灯したら

4WASの自己診断機能

Self-diagnosis function of the 4WAS

カテゴリー : 基本資料

Y31シーマおよびY31セドリック・グロリアのアンチロックブレーキシステム装着車に適用

ANTI-LOCK警告灯

4WASとは、4Wheel Anti Skidの略で、電子制御4輪アンチスキッドシステムのことです。いわゆるABS(アンチロックブレーキシステム)のことなのですが、当時、日産は4WASと呼んでいました。当サイトでも4WASと呼ぶことにしています。

ANTI-LOCK警告灯と自己診断機能

4WASには、整備性を向上させるための自己診断機能が備わっています。

この自己診断機能は「ANTI-LOCK警告灯が点灯したら、トランクルームにあるインジケータで故障箇所がわかるので、日産ディーラーに行く前に自分で確認してみよう」という類のものです。ANTI-LOCK警告灯が点灯していなければ実施する必要はありません。このような機能があるということだけ覚えておき、いざというときに役立ててください。

クルマの取扱説明書には、ANTI-LOCK警告灯について次のように書いてあります。

『エンジン回転中、アンチロックブレーキシステムに異常があると点灯し警告します。警告灯点灯時、アンチロックブレーキシステムの作動は停止しますが、アンチロックブレーキシステムがない状態のブレーキとして使用できます。点灯しつづけた場合は、すみやかに日産販売会社で点検を受けてください。』

万一故障した場合は、フェイルセーフ機能により通常ブレーキに自動的に切り替わります。

4WASシステムの回路図

この図はY31シーマ・Y31セドリック/グロリアに共通です。

4WASモジュール周辺の回路

診断手順

エンジンを始動すると、自動的に自己診断が開始され、システムに異常があるとANTI-LOCK警告灯が点灯します・・・と、ここまでは取扱説明書に書いてありますが、この先があるのです。

自己診断の結果、異常があると、4WASモジュールの赤色インジケータで故障部位を知らせます。

4WASモジュールとは、車輪回転センサーからの信号を受けて、アクチュエーターを制御しブレーキ液圧を増圧、減圧、保持をコントロールする、いわば4WASの中枢装置です。

このモジュールはトランクルームの左側奥(給油口の向かい側)に、斜めに取り付けられています。頑丈そうな箱に インジケータが1つポツンとあります。

トランクルーム左側にある4WASモジュール
47850-17V03 NIPPON ABS.LTD.
(右下の丸い穴がインジケータ)

インジケータの見方

診断して異常があると4WASモジュールの赤色インジケータで知らせてくれます。
インジケータの点滅回数で故障部位がわかる仕組みです。
点滅は、5~10秒消灯したあとに繰り返します。
なお、異常部位が複数ある場合は、1系統のみの点滅回数となります。その部位を修理すると、次の部位の異常を知らせてくれます。

インジケータの点滅回数 故障部位 異常診断時期 フェイルセーフ機能作動有無 ANTI_LOCK警告灯点灯有無
エンジン始動時 発進後6km/h時 走行時
1回 前輪左側アクチュエーターソレノイド経路 -
2回 前輪右側アクチュエーターソレノイド経路 -
3回 後輪アクチュエーターソレノイド経路 -
4回
5回 前輪左側回転センサー経路 -
6回 前輪右側回転センサー経路 -
7回 後輪回転センサー経路 -
8回
9回 アクチュエーターのモーター、モーターリレー経路
10回 アクチュエーターのアクチュエーターリレー経路
16回 モジュール電源、アース経路
点滅せず

ANTI-LOCK警告灯は、オルタネータの故障などでバッテリー電圧が著しく低下した場合にも点灯します。これは、「電圧が低すぎて4WASの機能が働きません」という警告です。
この他、車室内のヒューズ#14(電子部品(IG))が切れてもANTI-LOCK警告灯が点灯します。

また、カーナビ設置後などにANTI-LOCK警告灯が点灯するようになった場合は、車速信号線に割り込ませた配線によって車速信号が弱まり、走行中でも車速が0km/hになってしまっていると考えられます。これにより「車輪が回転しているのに車速がゼロなのはおかしい」と認識され、ANTI-LOCK警告灯が点灯してしまうのではないかと思われます(あくまでも憶測です)。車速信号の弱まり方はバッテリー電圧に依存すると思われますので、ANTI-LOCK警告灯が点灯したりしなかったりするのはバッテリー電圧の影響を受けているからだと推測できます。
この他、トランクハーネスコネクタが抜けると、回転センサーの信号が途絶えるため、走行中にANTI-LOCK警告灯が点灯します。

試してみました

エンジンルームにある4WASアクチュエーターのコネクタを1つ抜いてからエンジンを始動してみると、ANTI-LOCK警告灯が点灯し、4WASモジュールのインジケータは10回の点滅を繰り返しました。10回点滅は「アクチュエーターのリレー経路に異常がある」という意味なので、正常に診断したことがわかります。

エンジンルームにある4WASアクチュエーターとコネクタ。この一つを抜いて試した

エンジンルームにあるコネクタ類は、いつも熱にさらされているので、劣化してツメがポキポキ折れてしまい、接触不良になりやすくなっています。
このような診断機能を活用すると、故障部位を早く見つけられます。

オイルが漏れたときは…

4WASシステムの油圧回路からオイルが漏れたときは、ANTI-LOCK警告灯ではなくブレーキ警告灯が点灯します。これは油圧回路がブレーキマスターシリンダーにつながっているからで、ブレーキマスターシリンダーからブレーキオイルが漏れた時と同じ症状になります。(シュウさんからの情報提供で2005/2/6追加)