4WASとは、4Wheel Anti Skidの略で、電子制御4輪アンチスキッドシステムのことです。いわゆるABS(アンチロックブレーキシステム)のことなのですが、当時、日産は4WASと呼んでいました。当サイトでも4WASと呼ぶことにしています。
ANTI-LOCK警告灯と自己診断機能
4WASには、整備性を向上させるための自己診断機能が備わっています。
この自己診断機能は「ANTI-LOCK警告灯が点灯したら、トランクルームにあるインジケータで故障箇所がわかるので、日産ディーラーに行く前に自分で確認してみよう」という類のものです。ANTI-LOCK警告灯が点灯していなければ実施する必要はありません。このような機能があるということだけ覚えておき、いざというときに役立ててください。
クルマの取扱説明書には、ANTI-LOCK警告灯について次のように書いてあります。
『エンジン回転中、アンチロックブレーキシステムに異常があると点灯し警告します。警告灯点灯時、アンチロックブレーキシステムの作動は停止しますが、アンチロックブレーキシステムがない状態のブレーキとして使用できます。点灯しつづけた場合は、すみやかに日産販売会社で点検を受けてください。』
万一故障した場合は、フェイルセーフ機能により通常ブレーキに自動的に切り替わります。
4WASシステムの回路図
この図はY31シーマ・Y31セドリック/グロリアに共通です。
診断手順
エンジンを始動すると、自動的に自己診断が開始され、システムに異常があるとANTI-LOCK警告灯が点灯します・・・と、ここまでは取扱説明書に書いてありますが、この先があるのです。
自己診断の結果、異常があると、4WASモジュールの赤色インジケータで故障部位を知らせます。
4WASモジュールとは、車輪回転センサーからの信号を受けて、アクチュエーターを制御しブレーキ液圧を増圧、減圧、保持をコントロールする、いわば4WASの中枢装置です。
このモジュールはトランクルームの左側奥(給油口の向かい側)に、斜めに取り付けられています。頑丈そうな箱に インジケータが1つポツンとあります。

47850-17V03 NIPPON ABS.LTD.
(右下の丸い穴がインジケータ)
インジケータの見方
診断して異常があると4WASモジュールの赤色インジケータで知らせてくれます。
インジケータの点滅回数で故障部位がわかる仕組みです。
点滅は、5~10秒消灯したあとに繰り返します。
なお、異常部位が複数ある場合は、1系統のみの点滅回数となります。その部位を修理すると、次の部位の異常を知らせてくれます。
インジケータの点滅回数 | 故障部位 | 異常診断時期 | フェイルセーフ機能作動有無 | ANTI_LOCK警告灯点灯有無 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
エンジン始動時 | 発進後6km/h時 | 走行時 | ||||
1回 | 前輪左側アクチュエーターソレノイド経路 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
2回 | 前輪右側アクチュエーターソレノイド経路 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
3回 | 後輪アクチュエーターソレノイド経路 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
4回 | ||||||
5回 | 前輪左側回転センサー経路 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
6回 | 前輪右側回転センサー経路 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
7回 | 後輪回転センサー経路 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
8回 | ||||||
9回 | アクチュエーターのモーター、モーターリレー経路 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
10回 | アクチュエーターのアクチュエーターリレー経路 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
16回 | モジュール電源、アース経路 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
点滅せず |
ANTI-LOCK警告灯は、オルタネータの故障などでバッテリー電圧が著しく低下した場合にも点灯します。これは、「電圧が低すぎて4WASの機能が働きません」という警告です。
この他、車室内のヒューズ#14(電子部品(IG))が切れてもANTI-LOCK警告灯が点灯します。
また、カーナビ設置後などにANTI-LOCK警告灯が点灯するようになった場合は、車速信号線に割り込ませた配線によって車速信号が弱まり、走行中でも車速が0km/hになってしまっていると考えられます。これにより「車輪が回転しているのに車速がゼロなのはおかしい」と認識され、ANTI-LOCK警告灯が点灯してしまうのではないかと思われます(あくまでも憶測です)。車速信号の弱まり方はバッテリー電圧に依存すると思われますので、ANTI-LOCK警告灯が点灯したりしなかったりするのはバッテリー電圧の影響を受けているからだと推測できます。
この他、トランクハーネスコネクタが抜けると、回転センサーの信号が途絶えるため、走行中にANTI-LOCK警告灯が点灯します。
試してみました
エンジンルームにある4WASアクチュエーターのコネクタを1つ抜いてからエンジンを始動してみると、ANTI-LOCK警告灯が点灯し、4WASモジュールのインジケータは10回の点滅を繰り返しました。10回点滅は「アクチュエーターのリレー経路に異常がある」という意味なので、正常に診断したことがわかります。

エンジンルームにあるコネクタ類は、いつも熱にさらされているので、劣化してツメがポキポキ折れてしまい、接触不良になりやすくなっています。
このような診断機能を活用すると、故障部位を早く見つけられます。
オイルが漏れたときは…
4WASシステムの油圧回路からオイルが漏れたときは、ANTI-LOCK警告灯ではなくブレーキ警告灯が点灯します。これは油圧回路がブレーキマスターシリンダーにつながっているからで、ブレーキマスターシリンダーからブレーキオイルが漏れた時と同じ症状になります。(シュウさんからの情報提供で2005/2/6追加)