公開日:2016年9月23日
最終更新日:2017年1月15日

なんちゃって結晶塗装

エンジンヘッドカバーの塗装

Repair of the head cover painting

カテゴリー : メンテナンス

Y31シーマおよびF31レパードに適用

塗装後のエンジンヘッドカバー(インテーク マニホールド コレクターとコレクターカバー)

概要

2013年6月、走行距離33万キロの頃、エンジンヘッドカバーの結晶塗装を補修しました。補修と言っても部分的ではなく、見える部分すべて塗りました、水性塗料で(笑)しかもハケ塗りで(笑)

塗装前の状態

コレクターの塗装前の状態。はがれていないところも塗膜がめくれてきている

コレクターの塗装前の状態

塗装後の状態

レストア後も結晶塗装の質感は保たれている
レストア後も結晶塗装の質感は保たれている
結晶塗装がはがれていたところはそれなりの質感になった(笑)

結晶塗装はどうしよう?

本来なら塗る部分を取り外して塗りやすくしてから結晶塗装スプレーするのがベストなのですが、自分にはそのような技術も時間もありません。平日は通勤に使っているし、休日も使っているからです。
そもそも缶スプレーだと色・ツヤの調整ができないのでスプレー塗装は眼中にありません。だからハケ塗りしかありません(笑)。コツコツ作業することにしました。
では結晶塗装の"結晶"はどうしましょう。特に結晶塗装にはこだわってないのですが、まったく別物になっても困ります。
言わずと知れた結晶塗装は、塗膜が縮んだような独特の模様を持った塗装です。これが所々はがれてしまっているのですが、幸いはがれたところに凸凹があり、独特の模様をしています。この素地を生かし、結晶塗装じゃないのに結晶塗装のように見せる、"なんちゃって結晶塗装"をすることにしました(笑)

水性塗料でも意外と強い

もともと石油系塗料やラッカー系塗料は臭いので使うつもりはありません。
まず試したのはホビー用の水性塗料です。近似色を実際にヘッドカバーにタッチアップしてみると、思っていたよりも強靱で、爪で引っかいても水で拭いてもエンジンの熱でも剥がれませんでした。まるでエンジンの熱で焼き付いたかのようです。塗ったところはラッカーシンナーで簡単に拭き取れました。やり直しが容易にできるのも水性塗料の特長です。これで水性塗料でいけることを確信しました。
ちなみにホビー用の水性塗料の中で一番近いと思ったのは「ドイツ空軍機」の色でした(笑) ただホビー用は既にいろいろな色が混ざっているためか、それを基準にして調色しようとしても、なかなか思いどおりの色になりませんでした。
それと気をつけたいのはツヤです。ツヤがあるとハケ目が目立ってしまうので、ツヤ消しの塗料を選ぶことにしました。ツヤがあるものはホビー用でも使えません。試しにツヤ消し剤(フラットベース)を入れてみましたが、曇った感じになってしまいました(入れすぎかもしれません)。
耐油テストは行っていません。万が一、漏れたエンジンオイルによる塗膜への浸食は、それはそのときになってから補修すれば良いということにしました。

ホビー用の水性塗料H-64(ダークグリーン)にH-77(タイヤブラック)を混ぜてタッチアップしてみた。
緑が濃いので近くで見るとわかってしまう。水性塗料の強靱さは確認できた

色合わせ

エンジンヘッドカバーの色はカタログの写真ではかなり濃い色をしていますが、実車は淡い色をしています。ちょうど耐水ペーパーのような色です。色あせや汚れもあるでしょうが、ラッカーシンナーでゴシゴシ拭いても色は変わりませんでした。はがれた塗膜の裏側(ヘッドカバーの生地に触れていた面)は表側よりやや濃い色をしていました。

グレー系の明るさを確認しているところ
剥がれやすくなっている塗膜は布粘着テープを貼ってはがすとくっついてくる。
ヘッドカバーに触れていた面はやや濃い色をしていた。
これが結晶塗装の本来の色のようだ。これを基にして調色することにした
耐水ペーパーの色に似ているのでこれを参考に調色しても良い

用意した塗料は、原色っぽい色の水性ツヤ消し塗料のです。ホームセンターで簡単に入手できるモノにしました。ただ色によってはツヤ消しタイプがなかったので「ソフトなツヤ」を選びました。

ヘッドカバーはよく見ると緑っぽい色をしています。
黒い塗料に少しずつ白い塗料を混ぜていくと似た明るさのグレー色にはなりますが、色味が違います。普通、白を入れすぎるとぼけた色になりますが、ヘッドカバーの色はぼけていません。
そこで独特の色合いを生むために緑色で味付けしていきました。隠し味として黄色も入れました。ただ黄色を混ぜていっても黄色っぽくならず、緑っぽくなってしまいます。
途中で少し赤みが足りないことに気づき、わざと古臭く見せるために少し足しました。赤を入れたら黄色っぽくなり、かなり理想的な色になりました。

「ソフトなツヤ」タイプの塗料(緑、黄、赤)を足したせいか、思いのほかツヤが出てしまったので、本当は入れたくないのですがフラットベース(ツヤ消し剤)を足しました。フラットベース(ツヤ消し剤)を足すと色味がやや薄くなる(明るくなる)ので、調色しながら行いました。

紙に塗ってみたり、実際にヘッドカバーに試し塗りして色合いを確かめました。試し塗りは結晶塗装が剥がれているところにしました。結晶塗装の上に試し塗りするとシンナーで拭き取るとときに結晶の質感が失われてしまうからです。

色の割合は多い順から、黒、白、緑、黄、赤です。色以外ではフラットベースも入れました。

完璧は目指しません。少し濃い方が格好良く見えるし、カタログの写真がそうですから。

既存の結晶塗装や素地の凸凹を生かすため、塗料はできる限り薄めるのがポイントです(これとても重要なことです)。薄めず粘度の高い塗料のままだと凹みに溜まって平面になってしまったり、ハケ目が目立ってしまいます。

グレー系の色と比べると結晶塗装はやや緑っぽい色をしている
味付けに緑色をグレーに混ぜたら深みのある色になった
キャンバス化したコレクター。隠し味に黄色を混ぜてみた。水性塗料なので何度でも簡単にやり直しができる

剥がれかかった古い結晶塗装をはがす

はがれたところとはがれてないところの境目を目立たなくするためにはこれはきちんとしたいです。
ただ凸凹を生かしたいのでペーパーはかけられません。はがれるところはマイナスドライバーで軽く擦ってはがしました。
布粘着テープの粘着力を使ってはがすのも効率的です。
ワイヤーブラシは思いのほか、役に立ちませんでした。

はがれかかっている塗膜をマイナスドライバーや布粘着テープで剥がした

下塗り

密着力を高めるため、アルミにも使えて透明な「水性エポキシさび止め」をハケ塗りしました。漏れたオイルが浸みてきて塗料がはがれるのを少しでも防げれば良いかなという程度の考えです。
もともとかなりしゃぶしゃぶな感じでしたが、そのまま塗るとハケ目が目立ってしまいそうなので、50%の水で薄めました 。本当は薄めずに使うモノですが、薄めたせいか乾燥後のベタつきはありませんでした。塗った直後は白っぽい色でしたが乾いたら透明になりました。元々の結晶塗装の色がやや濃くなりました。クリアを塗った場合に似ています。
50ccのポリ容器に移して塗りましたが、塗り終わってもほとんど減っていませんでした。わずか5~10ccもあれば足りそうです。

透明の下塗りしたら色がやや濃くなった

上塗り

塗り始めたら少し色味が薄く、色調も「ただのグレー」で安っぽく見えました。
下塗り後の色合いがとても良い感じになったせいか、上塗りの色が安っぽく見えてしまったのです。
色合わせをやり直して少し濃くしました。そして試し塗りはもう少し広い面積にすることにしました。
試し塗りしたところはラッカーシンナーで拭き取りましたが、下塗りした塗料も少しだけはがれてしまいました。しかしそのまま構わず上塗りしました。

塗るのは1時間で終わりました。塗料の量はわずか10ccもあれば足ります。

マスキングテープは貼るのが面倒なので使いませんでした。
ヘッドカバー上部の英文字の部分は、後ではがせるので構わず塗りました。
エンジンは完全に冷えた状態で塗りました。熱があると早く乾きすぎて塗りにくくなってしまうからです。風が吹いていると容器の塗料の表面が乾いて膜が張ってしまいます。

ちなみに水性つや消しクリアを塗れば濃くなりそうなので試してみましたが、予想に反してあまり濃くならなかったのとムラになりやすいのでやめました。

薄めて塗った甲斐があり、結晶塗装に塗った部分はその質感が保たれたています。

塗り始めたら色味が合わないことに気付き、もう少し味付けすることにした
上塗りが終わったところ。文字の部分も構わず塗った
使ったハケと容器
乾燥後、文字に付いた塗料はウエスを巻いたプラスチックヘラで擦って剥がした。
ヘラだけだとすぐにすり減って滑ってしまうが、ウエスを巻くと適度に摩擦抵抗があって良く剥がれる
文字に付いた塗料の処理後
まあまあの出来栄えになった
派手さはない。元に近い状態に戻っただけだから(笑)

使ったもの

(括弧)内の値段は購入価格です。

上塗り塗料

  • 黒: ツヤ消し黒 アサヒペン 水性建物用 高性能架橋型シリコンアクリル樹脂塗料 合成樹脂(シリコンアクリル、フッ素)紫外線劣化防止剤HALS配合 強力サビドメ剤配合 1/5L (698円)

  • 白: ツヤ消し白 アサヒペン 水性建物用 高性能架橋型シリコンアクリル樹脂塗料 合成樹脂(シリコンアクリル、フッ素)紫外線劣化防止剤HALS配合 強力サビドメ剤配合 1/5L (698円)

  • 緑: グリーン(ソフトなツヤ) アサヒペン 水性ガーデンペイント サビドメ剤配合 防カビ剤配合 1/5L (798円)

  • 黄: カナリーイエロー(ソフトなツヤ) アサヒペン 水性ガーデンペイント サビドメ剤配合 防カビ剤配合 1/5L (798円)

  • 赤: 赤(ソフトなツヤ)アサヒペン 水性バリューコート 高性能多用途塗料 合成樹脂(シリコンアクリル、フッ素)紫外線劣化防止剤HALS配合 強力サビドメ剤配合 1/5L  (648円)

  • フラットベース(ツヤ消し剤) つや消し用添加剤 GSIクレオス MR.HOBBY 水性ホビーカラー H-40 10ml (110円×数個)

主に使った水性建物用は高分子結合による強靱な塗膜。酸性雨・排気ガス・塩害・紫外線に強い。強力フッ素パワー
フラットベース(ツヤ消し剤)

下塗り塗料

  • 透明 水性エポキシさび止め ニッペホームペイント ED02AS-1 0.2L 合成樹脂(エポキシ) アルミにも塗装可能 水性・油性塗料の上塗り可能 (798円)

プライマーとして使用。これはラッカーシンナーでも落ちにくい

その他

  • マイナスドライバー、布粘着テープ (古くなった塗膜剥がし用)

  • エアーダスター (ホコリの除去などに)

  • ポリ容器 50cc・250cc 広口ビン 材質:PE (調色用)

  • ハケ  大小各種(ムラなく、薄く、早く塗り広げるためには大きくて固めのハケが良い)

  • ラッカーシンナー(ラッカーうすめ液)( 塗る前の汚れ取り用、試し塗り塗料の拭き取り用)

  • プラスチックヘラ 、ウエス(文字の部分に付着した塗料の除去用)

試し塗り塗料

下記塗料は本番では使っていません。

  • H-20 つや消しクリアー 水性ホビーカラー ミスターホビー つや消し 基本色 10ml (株)GSIクレオス

  • H64 RLM71ダークグリーン 半光沢 ドイツ空軍機 水性ホビーカラー ミスターホビー   10ml (株)GSIクレオス (88円) …緑が強い

  • H65 RLM70ブラックグリーン 半光沢 ドイツ空軍機 水性ホビーカラー ミスターホビー  10ml (株)GSIクレオス (88円)

  • H-77 タイヤブラック つや消し 水性ホビーカラー ミスターホビー  タイヤ用 (株) 10ml GSIクレオス (130円) 

  • XF-69 NATOブラック タミヤカラー アクリル塗料ミニ 10ml (株)タミヤ (130円)

  • XF-74 OD色(OLIVE DRAB -  JGSDF) 陸上自衛隊 タミヤカラー アクリル塗料ミニ 10ml (株)タミヤ (130円)

これらは本番では使ってないが、水性塗料の強靱さは確認できた

その後

3年経ってもエンジンの熱ではがれることはありませんでした。むしろ熱で強固に定着したようです(笑)

修理に出したときに工具が当たったのか、はがれてしまったところがありましたが、タッチアップで補修しました。タッチアップがあるとすごく便利です。
作業に出したときにエンジンオイルが付いてツヤが出て色味が変わってしまいましたが、KUREエレクトロニッククリーナーで油分を吹き飛ばして乾燥させたら元に戻りました。
少量の油分ならウエスに吸い取り、あとは放っておくだけで自然に蒸発、乾燥していきます。汚れてもウエスでこするのはツヤが出てしまうので厳禁です。

塗装してから3年3ヶ月経過後の状態(2016年9月撮影)
塗装してから3年3ヶ月経過後の状態(2016年9月撮影)
ホコリが溜まっているが結晶塗装は健在(2016年9月撮影)