Y31型系車の後期型から「エンジンとA/T(オートマチックトランスミッション)との総合制御(DUET-EA)」が採用され、変速ショックとタイムラグの少ない人間の感性に合った滑らかで落ち着きのある安定した走りが実現されました。・・ですが作動条件が厳しく、実際に制御しているかどうか疑問です。
概要
エンジンのECCSコントロールユニットとA/Tコントロールユニット間でエンジン出力制御信号の相互通信を行い、走行状態に応じたリアルタイム連携制御により変速ショックの低減(変速制御) が図られます。
Y31セドリック・グロリア(後期)VG20DET搭載車には、変速ショックの低減(変速制御)に加え、燃費の向上(燃料制御)も実現されました。
上記の制御を行うため、①エンジン制御要求信号、②減速度信号、③エンジン制御許可/禁止信号をECCSコントロールユニットとA/Tコントロールユニット間で通信しています。
制御信号
DT1、DT2、DT3の各信号は、それぞれ0Vと約10Vのデジタル信号です。以下0Vを”L”、約10Vを”H”として記載します。
DT1、DT2は、ECCSコントロールユニットへの入力信号であり、DT3はA/Tコントロールユニットへの出力信号です。なお、制御モードは表のようになります。
通信線 | 信号の機能(電圧レベル L:0V,H:約10V) | ||||
---|---|---|---|---|---|
A/T→エンジン (入力信号) |
DT1 | L | L | H | H |
DT2 | L | H | L | H | |
エンジン制御要求信号 | 急減速信号 | 制御せず | |||
エンジン→A/T (出力信号) |
DT3 | L | H | ||
エンジン制御禁止信号 | エンジン制御許可信号 |
変速制御
変速時に過大なトルクが伝達されると変速ショックが大きくなります。DUET-EAでは、エンジンが高トルク、高回転で運転されている時にシフトアップを行うと、変速動作中にA/TコントロールユニットよりECCSコントロールユニットに向けて、エンジン制御要求信号を発生します。それを受けて、ECCSコントロールユニットは、エンジン回転の低下を促進させるため、点火時期のリタード(点火タイミングを遅らせること)をして変速ショックの少ない滑らかな変速制御を行います。
ECCSコントロールユニットは、トルクダウン要求信号に基づき点火時期をリタード(遅角)して、一時的にエンジンの発生トルクを小さくします。
A/Tコントロールユニットは、タービンセンサーと車速センサー1によりA/T内部の状態を把握し、最適な変速ポイントで変速制御を行います。
これらの制御により、高トルク、高回転域での変速性能を大幅に向上させ、滑らかな変速が行われます。
作動条件
スロットル開度が大で下記条件で変速した時の走行時に作動します。
Y31シーマ(後期)
A/Tセレクト位置:A/Tモードスイッチ | AUTO | POWER | SNOW |
---|---|---|---|
Dレンジ | 1→2速、または2→3速の変速時 | 2→3速の変速時 | |
2レンジ | 1→2速の変速時 | 作動せず |
Y31セドリック・グロリア(後期)のVG20DET搭載車
A/Tセレクト位置:A/Tモードスイッチ | AUTO | マニュアルPOWER |
---|---|---|
Dレンジ | 1→2速、または2→3速の変速時 | |
2レンジ | 1→2速の変速時 | |
3レンジ | 1→2速、または2→3速の変速時 |
ただし、下記の禁止条件が1つでも成立した時は作動しません。
A/TセレクトレバーがDレンジ、2レンジ、3レンジ以外の時
A/T油温、エンジン水温が約70℃以下の時
エンジン回転数が約2700rpm以下の低負荷時
ECCSコントロールユニットまたはA/Tコントロールユニットが車速センサー、壁温センサー、エアフローメーターの異常を検出した時
レギュラーガソリン使用時
CPUバックアップ時
通信ハーネスの異常を検出した時
以上の禁止条件を1つでも検出した場合には、ECCSコントロールユニットのDT3が”L”となり、A/TコントロールユニットのDT1、DT2は”H”となります。
この中で気になるのは回転速度が約2700rpm以下では作動しないということ。変速時のショックを和らげるために、自己流で変速タイミングに合わせてアクセルペダルを戻すこともありましたが、これはかえって逆効果だったのかもしれません。
燃料制御
※これはY31セドリック・グロリア(後期)VG20DET搭載車のみ
ECCSコントロールユニットは、通常時(急減速以外)と急減速時とでリカバリー回転数を区別し、通常時はフューエルカットのリカバリー回転数を低下させることにより燃費を向上させ、急減速判定時にはフューエルカットのリカバリー回転数を上げることによりエンジン回転の低下を防止してきめ細かな制御をします。
急減速信号は、A/TコントロールユニットがA/T内の車速センサー1(出力軸回転数センサー)で減速度を検出し、ある一定以上の減速時にECCSコントロールユニットへ通信します。
愛車で実測してみました
通信線 | 電圧 | |
---|---|---|
A/T→エンジン (入力信号) |
DT1 | キー「ON」で6.5V、エンジン始動で約7V。 1→2速へ変速しても電圧は変化せず(約7Vのまま)。 LED検電テスターをつなげるだけで電圧が下がってしまう。 |
DT2 | エンジン始動で7.0V。 急減速しても電圧は変化せず(7Vのまま)。 この電圧が変化するのはY31セドリック・グロリアだけか? |
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エンジン→A/T (出力信号) |
DT3 | 常にOFF(0V)。 一度だけ4000回転以上の高負荷で約10Vになったことがあるが、それ以来一度も電圧は変化せず(0Vのまま)。 |
通信線の電圧を測ってみましたが、まったく制御が行われていないことがわかりました。
VGエンジンはきめ細かな電子制御で滑らかな走りを実現させているはずなのに、DUET-EAのきめ細かすぎる禁止条件が功を奏して(?)、いつ何時も「制御禁止」になってしまっているようです。おそらく回転数が低かったのだろうと思います。それとも愛車に何らかの異常が起きているのでしょうか?
今後は時間があれば、DT1~DT3の信号線を強制的に「エンジン制御要求」&「エンジン制御許可」にして走らせてみようと思います。