自動で切り替わらない
オート リフレックス ルーム ミラーの故障
(メンテナンス)
Y31シーマおよびY31セドリック・グロリアに適用

概要
2009年12月、お友達から研究用としてもらった壊れているオートリフレックスルームミラーを直しました。
症状
・AUTO時、自動で切り替わらない(ミラーは暗くなったまま)
故障探求
1.症状の確認
とりあえず13.5Vの電源をつないでみると、DAYスイッチON、AUTOスイッチON、NIGHTスイッチONで消費電流は0.03Aでした。
DAYスイッチONでミラーが明るくなり、AUTOスイッチON、NIGHTスイッチONで暗くなりました(正常)。
AUTOスイッチONにして正面と背面の両方のセンサーを遮ってもミラーは暗くなったままで、両方とも光を当てても暗くなったままでした。
感度調整ボリュームを動かしても変化しませんでした(異常)。
つまり、AUTO時にミラーが暗くなりっぱなしという症状です。
考えられる原因は、
・光センサーの故障→光りを感知しないか感知した状態で固定されている
・感度調整の不良→調整できる範囲を著しく超えている
のどちらかだと思います。
ミラーを明るくしたり暗くするのは手動スイッチでできているので、明るくするための機能は生きています。問題は自動で変化させる機能です。
2.分解

修理には分解が伴う
オートリフレックスルームミラーの分解方法はこちらをご覧ください。
3.基板上の部品の確認
部品面は手塗りで基板コーティングされていました。ミラー本体は場所的に振動しやすいですが、基板がコーティングされていると部品が振動でどうにかなることはないと思います。

振動対策か? 基板に透明でツヤのあるコーティングがされていた
半固定抵抗器(記号=VR17)の2個とも端子が錆びていて、抵抗器の内部まで侵食しているようでした。製造時に半固定抵抗器で微調整後、動かないように接着剤で固定したようですが、その接着剤が原因で錆びていました。

半固定抵抗器が回らないように留めている接着剤が原因で錆びているようだった

接着剤を剥がしたら内部まで腐食しているようだった
ここまで侵食していれば抵抗値はおかしな値になるはずです。この半固定抵抗器は前後の光りセンサーの感度微調整用なので、これが壊れたらAUTO時の設定範囲を超えて制御不能になる可能性があります。
光センサーであるCdSセル(記号=CDS2)は、ちょっと表面が汚れているので、交換したほうが良いかもしれないと思いました。

光センサーのCdSセルの表面に濁っているところがあった
4.基板のハンダ面の確認
ハンダ面も手塗りで基板コーティングされていました。ハンダの腐食などはありませんでした(コーティングで良く見えないだけ?)。

基板コーティングがテカテカして見にくい
5.修理方針を決める
基板を確認してみて、おかしいと思われる部品は次の2点でした。
・半固定抵抗器(VR17)×2個
・CdSセル(CDS2)×2個
この両方とも交換すれば完治すると思いますが、故障の原因部品を特定したいので、可能性の高いVR17から交換することにしました。それでもダメだったらCDS2を交換することにします。
6.半固定抵抗器(VR17)を交換してみる
半固定抵抗器VR17は主に製造時の最終的な調整やメンテナンス時の調整で使う部品です。それ以外の時は動かさないので半固定という名称になっています。VR17は基板上に明記されている記号です。このVR17の抵抗値は2.2kΩです。
VR17を基板から外し、テスターの抵抗計で抵抗の変化を見ました。手で回してみたらスムースに変化しませんでした。これは予想通りです。これでVR17が故障の原因であることがほぼ確定しました。

基板から半固定抵抗器VR17を取り外したところ
VR17の代替品は在庫の中から選びました。この在庫は新品の他に分解して抽出した中古品も含まれています。ちょうど同じ抵抗値のものが2個あったので交換しました。

半固定抵抗器の在庫。この中から代替品を選んだ

在庫の中から似たような形で同じ抵抗値のものを2個選んだ
代替品を買う場合は半固定抵抗器に書いてある数字=222と同じものを選びます。この222は抵抗値を表していて、意味は22×10の2乗Ωです。すなわち22×100=2200Ω=2.2kΩです。1個100円以内で買えます。

代替品に交換したところ

外した半固定抵抗器VR17は中までボロボロだった
しかし、代替品に変えても症状は変わりませんでした。
7.CdSセル(CDS2)を点検してみる
CdSセルとは硫化カドミウムを使った光センサーのことです。光りが当たると抵抗値が低くなります。CDS2は基板上に明記されている記号です。
このCdSセルの表面が汚れていたので感度が悪くなっていると思い、交換する前に点検することにしました。
CdSセルを基板に付けたまま両端の抵抗値をテスターで測ってみました。CdSセルに光りを当てると抵抗が小さくなったので、一応光りには反応しているようでした。すごく明るく照らしても最低抵抗値は150〜300Ωくらいでした(代替品として用意していたCdSセル類はほぼ0Ωまで変化する)。

CdSセルを検査しているところ
8.CdSセルに並列に抵抗をつないでみる
抵抗値を段階的に変化できるロータリー式抵抗器で擬似的に光センサーの出力を変化させてみました。
・設定状態:
スイッチ=AUTO、感度調整ボリューム=中間。
抵抗が56kΩ以下で電源ONにするとミラーは明るくなりますが(高反射状態)、一旦100kΩ以上にして暗くすると(防眩状態)、再び56kΩ以下にしても明るくなりませんでした。

CdSセルと並列にロータリー式抵抗器をつないで点検しているところ
まだAUTOで暗くなってしまうということは、
・前方光センサーのCdSセルの感度が鈍くなっていて、昼なのに夜だと認識している。
・後方光センサーのCdSセルの感度が良すぎて眩しい光が当たっていると認識している。
のどちらか、あるいは両方が考えられます。
これらを微調整するのが半固定抵抗器VR17なのですが、ひたすら回しても良くなりません。ということは、CdSセル自体に問題があると思うしかありません(?)。
あともう一つ考えられるのは、ミラーが暗い状態とは電源OFF時と同じ状態なので、暗いままというのは制御回路が正常に作動していないということ。
制御していないとミラーが明るくならないのだから、どこかが制御不能になっていることも考えられます。
9.感度調整ボリュームを疑ってみる
CdSセルに抵抗をつなげて検査したとき、感度調整ボリュームをいじっても変化しなかったので、もしかして感度調整ボリューム自体が壊れているのかもしれないと思い調べてみることにしました。
検査して抵抗が滑らかに変化することがわかりました。正常です。
・最小値:90Ω、最大値:1MΩ、中央位置:130kΩ

感度調整ボリュームの抵抗の変化を点検しているところ
10.再び基板を確認
再び基板を確認したら、CdSセルにつながっている抵抗R32の片方にハンダ割れがありました。ハンダ補修してみましたが変化はありませんでした。

抵抗R32のハンダ割れ
基板を触ったときに暗くなっていたミラーが明るく変化することがありました。その後、何度か基板を反らしてみたら必ず変化することがわかりました。
基板を長さ方向に反らしたときに変化があったので、長さ方向に長い部品が怪しいことになります。
基板コーティングでよく見えなかった基板にハンダ割れかパターン切れ、または部品切れがあるようです。
↓触ったときに変化のあった部品
・コネクタ … 接触不良か?
・抵抗:R28 … 片方のハンダが割れていた
・IC:TC4071BP(抵抗R28の近く) … これは異常なかった
抵抗R28の両方のハンダを吸い取ってからハンダをつけ直しました。これで基板を反らしてもねじっても変化しなくなりました(症状が改善した)。

抵抗R28のハンダ割れ
しかし、電源を入れ直して基板を1回反らすとミラーの明暗が変化するので、まだおかしいところがあるようです。
基板コーディングで見にくい基板のハンダ面をさらによく見ていたら、またハンダ割れを見つけました。どうやかなり見落としていたようです。
・ダイオード:D13
・抵抗:R19
・抵抗:R30
上記3部品のハンダを吸い取ってからハンダし直したら完全に直りました。

ダイオードD13のハンダ割れ

抵抗R30(左)、R19(右)のハンダ割れ

これも抵抗R30(左)、R19(右)のハンダ割れ
修理
下記部品の交換およびハンダ割れ補修により完治しました。
・半固定抵抗器VR17(2.2kΩ)の交換
・ダイオードD13のハンダ割れ補修
・抵抗R19、R28、R30、R32のハンダ割れ補修

メイン基板の修理した場所
(黄色は部品交換した場所、赤色はハンダ割れを補修した場所を示している)
【使った工具類】
・直流電源: 菊水 PAN16-18A
・スッポン: 白光 No.18G VR17外しに
・ハンダコテ:SURE SX-20A 18W
・ハンダ: アルミット KR-19
・テスタ: 三和 153-BX
・ロータリー式抵抗器 :RSB-36 5Ω〜1MΩ 36種類 容量:1/4W
・照明器具、懐中電灯
関連ページ
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