概要
車高センサーは車高を抵抗値に変換します。その抵抗で基準電圧を分圧したものが電圧値としてエアサスコントロールユニットに読み込まれます。
エアサスコントロールユニットは、この「電圧」で「現在の車高」を認識しているのです。
つまり「車高の変化」 = 「抵抗の変化」 = 「電圧の変化」 という式が成り立ち、エアサスコントロールユニットは、「電圧が変化したら車高が変化した」という認識をします。エアサスコントロールユニットは正常な電圧になるまで車高を調整します。
ここからが本題でして・・・
現在の車高はそのままに「電圧を変化させると」、正常な電圧に戻そうとする制御が行われので、「車高が変化します」。
「電圧」を変化させるには「抵抗」を変化させればよいので、「抵抗」を変えれば「車高」が変化することになります。
この「抵抗」の変化で「車高」を変化させているのがエアサスキットです。
ここでは「抵抗」による車高調整の原理と、実験結果を紹介します。
これらを理解できれば、エアサスキットの自作もできます。
抵抗とは
電流の量を調整したり、電圧を分圧するときに使う電子部品です。電流を水の流れで例えると抵抗は、水の流れる量を調整する弁であったり、他のところに水を流す水路であったり、水を貯めるダムのような働きをします。
ここで使う抵抗は、ほとんど電流は流れない部分なので、定格電力が1/4W程度の入手しやすいカーボン抵抗で十分です(1本数円程度)。
抵抗による車高調整の原理
車高センサー(基本資料)と(コネクタ表)はご覧になっていると思いますが、先ずは復習から。
リアの車高で説明します。
例えば、トランクに荷物を載せてリアの車高が下がったとします。
車高センサーの可動部は「車高が低いとき」の方へ動きます(図では下の方)。
すると端子No.24の電圧が標準車高時よりも低くなります。エアサスコントロールユニットがこれに気付くと、車高を高くする制御を始めます。
コンプレッサーを動かし、リアのエア供給バルブを開いてエアを送り続けます。リアの車高が上がってくると、車高センサーの可動部は標準の位置に戻ってきます。
やがて端子No.24の電圧が標準車高時の電圧と等しくなると、制御を停止します。
逆に車高が高くなっているときは、端子No.24の電圧は高くなるので、標準の電圧になるまでリアのエア排出バルブを開けてエアを抜きます。
なお車高調整の制御が正常に終わった後の端子No.24の電圧は、必ず標準車高時の電圧(愛車で約2.2V)になります。
◆ ◆ ◆
次に、抵抗によるリアの車高調整のお話です。リアは現在標準車高になっているものとします。
エアサスコントロールユニットの端子No.22~24間に数kΩの抵抗をつなげてみます。
するとエアサスコントロールユニットの端子No.24の電圧が高くなります。
そしてエアサスコントロールユニットが「車高が高い」と認識すると(本当は車高が高くなったと誤解しているだけ)、車高を下げる制御が始まります。
車高が下がっていきます。リアの車高センサーの可動部が動き、抵抗が変化します。このとき、エアサスコントロールユニットの端子No.24の電圧も変化します。
やがてエアサスコントロールユニットの端子No.24の電圧が標準車高時の電圧と等しくなります。すると車高を下げる制御は停止します。
つまり、わずか抵抗1本でリアの車高を下げることができるのです。
なお、フロントの車高を下げるときは、右と左の分がそれぞれ必要です。
フロント右の車高を下げるときは、エアサスコントロールユニットの端子No.22~23間に数kΩの抵抗をつなげます。
フロント左の車高を下げるときは、エアサスコントロールユニットの端子No.22~31間に数kΩの抵抗をつなげます。
実験: 抵抗で車高を下げてみる
実験中、エアサススイッチはすべてNORMALで測定しました。
測定の前にエアサススイッチを一度HIGHにして車高インジケーターが点いたのを確認し、その後NORMALに戻して車高インジケーターおよびエアサスインジケーターキットによる表示が消えていることを確認し、さらにこれらを2~3回繰り返しました。
なお、フロントの右と左は同時に実験しましたが、リアはフロントとは別々に実験しました。
表中の「抵抗値」は、フロント左の場合はエアサスコントロールユニットの端子No.22とNo.23との間に接続した抵抗、フロント右の場合は、同端子No.22とNo.31との間に接続した抵抗の値です。
「測定値」は、地面からフェンダーアーチの頂点までの距離です。
「変化量」は、標準の車高から下がった距離です。
抵抗による車高の変化(フロント) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
フロント左 | フロント右 | 備考 | |||||
抵抗値 (Ω) |
測定値 (mm) |
変化量 (mm) |
抵抗値 (Ω) |
測定値 (mm) |
変化量 (mm) |
||
- | 668 | - | - | 663 | - | 標準の車高 | |
10k | 668 | 0 | 10k | 663 | 0 | ||
8.2k | 668 | 0 | 8.2k | 663 | 0 | ||
6.8k | 668 | 0 | 6.8k | 663 | 0 | ||
5.6k | 656 | -12 | 5.6k | 654 | -9 | ||
4.7k | 656 | -12 | 4.7k | 647 | -16 | ||
3.3k | 656 | -12 | 3.3k | 646 | -17 | ||
2.2k | 635 | -33 | 2.2k | 626 | -37 | ||
1.5k | 619 | -49 | 1.5k | 618 | -45 | ||
1k | 614 | -54 | 1k | 605 | -58 | ※1 | |
820 | 613 | -55 | 820 | 605 | -58 | ※1 | |
※1:エア排出バルブが開きっぱなしになり、車高はこれより下がらないので、抵抗を使った車高調整はこれが限界と思われる。 ※変化量がマイナス値なのは車高が下がったことを示している。 ※一度しか測定していないため誤差があるので参考程度に。 ※特に愛車のフロントの車高センサーは調子が悪い(左右のバランスが悪い)感じがするので参考程度に。 |
抵抗による車高の変化(リア) | |||
---|---|---|---|
リア | 備考 | ||
抵抗値 (Ω) |
測定値 (mm) |
変化量 (mm) |
|
- | 648 | - | 標準の車高 |
10k | 640 | -8 | |
8.2k | 639 | -9 | |
6.8k | 637 | -11 | |
5.6k | 633 | -15 | |
4.7k | 628 | -20 | |
3.3k | 615 | -33 | |
2.2k | 593 | -55 | |
1.5k | 572 | -76 | |
1k | 560 | -88 | ※1 |
820 | 559 | -89 | ※1 |
※1:エア排出バルブが開きっぱなしになり、車高はこれより下がらないので、抵抗を使った車高調整はこれが限界と思われる。 ※変化量がマイナス値なのは車高が下がったことを示している。 ※一度しか測定していないため誤差があるので参考程度に。 |
実験の結果、フロントは最大で約60mm、リアは最大で約90mmの下げ幅があることがわかりました。エア排出バルブが開きっぱなしになっても車高はこれより下がらなかったので、抵抗でこれ以上下げるのは無理なようです(というか物理的に何かに当たっているようでしたので、当たっているものを省けばもっと下がると思います)。
実験で使った抵抗は、ロータリー式抵抗器(RSB-36)です。5Ω~1MΩの36種類の抵抗が入っています。
左右の車高バランスが狂っている時は、このような実験でデータを集め、抵抗で補正することもできますね。
注意
車高を極端に下げたまま走らせることは避けてください。あくまでも撮影用としてください。特にエア排出バルブが開きっぱなしになった状態が5分以上続くと、フェイルセーフになる可能性があります(ローロックしてしまったら抵抗を外してエンジンをかけ直せば元に戻るはずです)。
あとがき
ここでは抵抗を使って車高を下げる方法を書きましたが、反対に車高を上げるにはどうしたらよいのでしょうか? 抵抗による車高調整の原理を理解すれば、自ずと答えが見えてくるはずです。必要ならトライしてみてください。